「ついやってしまう」体験のつくりかたを読み返した

何年か前に「ああ、いい本だなあ」と思ってから自分も体験の作り方にコミットするようになったので読み返してみた。初めて読んだときほどの衝撃はなかったけど、やっぱりそうだよねと気付きもあったので言語化しておく。

書籍はこちら: 「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ

なお、自分は普段業務システムを相手にしているので、第二章以降「驚きのデザイン」「物語のデザイン」の読んだまとめは割愛。

直感をデザインする、あるいは直感的ということ

第一章はマリオを題材に、ユーザにルールを伝える技法が説明されている。マリオはひと目見てルールが言語化されているわけではないし、小さい子に聞いてみると「つまらなさそう」に思えるそう。それでも、なんとなく操作してみてなんとなく先に進めてなんとなく楽しめる、そんな体験が埋め込まれている。

仮説と検証

ユーザは、マリオが右を向いていて、背景がなんとなく右に向かっているように見えることがわかる。そこで、「右かな?」と思い進んでみる。すると、左に向かってくるクリボーに遭遇し、「右に進めばなにかがある」「このゲームは右に進めばいいんだ」と学習する。このとき、ユーザは

の仮説検証サイクルを経験する。

この仮説検証サイクルに乗ってもらうため「右に向いたマリオ」や左に向く背景画像など仮説のもとになる手がかり(= シグニファイア)を埋め込んでおく。これによりどのようなことができそうのか、仮説が立てられ、また結果をFBすることでマリオでどのようなことができるかを体験できる。

仮説を立て、実行することで検証を行い、期待通り・望ましい結果が得られたら嬉しくなり、またやってみようと思う。このサイクルに乗ることでユーザはゲームを「おもしろい」と感じるようになる。

考察: "直感的に使える"

体験を作るときに、「直感的に!」、とか「直感的じゃないよね」などというけど、「直感的」の解像度を上げるなら、要素ごとに基準が存在するんじゃないだろうか。

  • 行動の仮説を立てやすいこと
  • 検証できること
  • 正しいFBを受けられること

など。プロダクトのUIを作っていて「使いづらい」と感覚的に思うときには、概ねどれかが足りていない。「直感に反する」と言ったり感じたりするときも同じ。

  • そもそも、シグニファイアになるボタンやリンク、inputが探せない
  • やりたいことがあるのに、どのボタンを押せばいいのか、判別がつかない
  • 登録や検索をしたのになにも返事がない

といったUIデザインになってしまっていないだろうか。

画面や箱の情報量が多いから削ったら、今度はどこからなにができるのかわからなくなった(実は3点リーダーの中にありました...とか)、はあるあるなんじゃないだろうか...

ゲームデザインにおける直感のデザインは、UIデザインにおけるインタラクションと全く同じ性質を持っている。少し前になんか読んだことあったような、と思ったらマイクロインタラクションにあった「トリガー」「ループ」「フィードバック」と全く同じことが書かれているなと思ったのだった。

ただ、ゲームデザインと異なり、プロダクトのUIは操作していて驚くようなこと、禁忌やタブーに触れるようなものがあってはいけない。業務システムは、特定のシーンで特定の業務を遂行することを念頭に設計されるので、驚きや謎解きはなく、できるだけ早く、かつ簡単に処理できるようなデザインにしたい。言い換えると高いユーザビリティを提供できるものにしたい。

おまけ: ユーザビリティについて

ユーザビリティの定義、高め方はISO 9241に規格として存在しているのでぜひ参考したい。たとえば人間中心設計推進機構が出している、入門向け資料がわかりやすい。

出典 www.hcdnet.org

人間中心設計の網羅的な説明はJIS規格が参考になる。 kikakurui.com